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ブルーノートと混同してはならない同義音 [楽理]

 前回のブログ記事にて力瘤を蓄えるかの様に語っていたのはタイトルが6thコードという事もあり、その辺りの印象が強く残るかもしれませんが、真に注目してもらいたい点というのは、解決という進行を行わない静的なドミナント7thコードが持つ7度音の特徴についてだったのです。その七度音は、後続和音に「半音の勾配」を転がり込む訳ではなく、ドミナント7thコードは解決することもなく「一発コード」の様にしてアンサンブルに坐している時もあります。


 つまり、進行をする事のないドミナント7thコードとやらが、例えばG7というコードの一発状態であれば、f音は根音へ順次進行しようと今か今かと地団駄を踏んでいる訳でもなく、逆方向の6度の余薫を纏わせ乍ら6度に行けば7度に再度戻って来る様な、もはや7度が止り木の様になっているのが、ブルース/ジャズにおける「多義的」なドミナント7thコードだと言う特徴をあらためて知る事が重要だったのです。ですので、ジャズ方面に於て6度の取扱いは13度音とともに重要であるので、その構築の出自を改めて詳らかに語る必要があっただけの事であり、ドミナント7thコードの重要な部分は可動的変化に依ってその地位が平均律社会の中で収まる事となった「ブルー音度」(=ブルー3・5・7度)という所を常に念頭に置いていただきたい訳です。


 少し前に、──とはいえ2015年に入ってすぐの事──Twitter上にて、ブルーノートとやらが可動的変化を起す前に上方的に動く、などと誤った認識で呟いていた者がおりました。楽理的には一所懸命学んでいる様な者であるにも拘らず、いざブルーノートを語ると誤った認識に陥ってしまうのだと痛感しましたが、ブルース/ジャズに於けるブルーノートというのは、その音が出現したからには大多数は下行的な音脈を伴って横の線は紡がれていきます。なぜなら、ブルーノートという音が可動的変化を起す前の音は上方の半音上にある訳ですから、可動的変化を起す前の音に吸着されてしまった場合、それは真なる音階固有音に対して単なる長前打音的に「導音のクサビ」を打っただけの事に過ぎない動作であり、長前打音として半音階的に現れたその音は、偶々ブルーノートと呼ばれる音度にあったとしてもそれはブルーノートの動作と全く異なります。

 例えば、「きらきら星」の「ド・ド・ソ・ソ・ラ・ラ・ソ」という節は、ハ長調に生ずる長音階から構築されている音階固有音からの4音の抜萃です。言うなれば、この一節の音階固有音に対して長前打音的に半音下から装飾音を付けなさい、という問題があった場合、次の様になる訳です。

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 譜例上段は原形で、中段が「長前打音」の装飾音が附与されたもので、下段が「前打音」が付与されたものです。長前打音および前打音の歴時(=音価)の取り方は作者に依って解釈が異なる事がありますが、歴時の解釈=装飾音そのものの音価の取り方の解釈以前に装飾音の歴時は、長前打音の装飾音>前打音の装飾音という風に長前打音の方が音価という歴時は長く取る物です。

 古くからの大家のそれに倣えば、中前打音付与に依る中段の譜例では実際には8分音符の連行で繋げて弾いても良いのです。前打音の方は古くからの体系に準えるならば装飾音を16分音符で取って各拍を逆付点の形で実際に弾くでしょうが、現今では前打音はもっと短く取り、32分音符程度の音価から逆二重付点として奏する事の方が多いでしょう。

 装飾音にスラッシュが付くか付かないかで、これほど解釈は異なるというのも今回あらためて述べておきますが、装飾音符そのものが8分音符で表す事の方が多いのが慣例であるのですが、複前打音の場合の歴時となると8分音符ばかりではなくなりきめ細かさを表すためにもっと細かい時価で表す事もありますが、これらの表記はあくまでも作者の解釈に依拠する所が大きいので一義的に捉えてもいけない部分です。多くの解釈を体得する事が肝要なのですが、最も声高に述べたい部分は、今回譜例中段で示した長前打音の実奏では8分音符で繋げて弾いて構わないのであります。


 きらきら星の譜例上段の原形は、ハ長調の長音階での「音階固有音」の中から4音を抜萃した物です。その音に対して半音階的な装飾音を付与しない限りは原形こそは調性に根差す「骨子」を示しているのでありますが、その骨子となる音に対して半音下から装飾音を付与するとなると、厳密には先の譜例の「弱拍」で生ずる装飾音は譜例とは異なる表記の方が望ましくなることがあります。


 ハ音に対しては1・2拍目共にロ音から充てております。1拍目は「強拍」であり、この強拍に対して装飾的な「導音」を充てる訳ですから「導音」からの音として表すのは必然的な表記ですが、2拍目がこれに倣う必要は無いのです。

 2拍目は弱拍でして、その装飾音はハ音から単に可動的変化で半音下がった変ハ音でも本当は構わないのです。以後現れる偶数拍の音階固有音に対する装飾音は、減1度下からの変記号であって構わないのです。つまり譜例通りだと

「シド シド ファ#ソ ファ#ソ ソ#ラ ソ#ラ ファ#ソ」なのですが、厳密に表すならば

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「シド ド♭ド ファ#ソ ソ♭ソ ソ#ラ ラ♭ラ ファ#ソ」

 とすべきと述べているのでありまして、弱拍で生ずる装飾音の本来の可動的変化を示しているのです。然し乍ら、実際にそれをやると非常に読みづらくなるのを考慮して、最初の譜例の様にしているのが通例という訳です。


 それらの変化音から気付く事はありませんでしょうか!?

 2015年初頭でしたら、「ゲラゲラポー」を脳裡に映ずる事が出来るかもしれません。

 つまり、ゲラゲラポーというのもメロディーは8分音符で、ブルーノートに等しい音を音階固有音に対して長前打音を充てていると解釈できるのでありまして、先のきらきら星の例に則った形で解釈すれば、ゲラゲラポーの「音階固有音」とやらは本来は次の様なシンプルな音階固有音が坐しているのであって、そのシンプルな音に対して、半音階的に「臨時的な導音のクサビ」を打っているのがゲラゲラポーの主旋律の特徴とも謂えるのです。

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 その音に対し長前打音的に半音下からの装飾音を付与するかの様に楽理的には分析しなければならない筈で、1・2拍目に生ずる音を短調由来の「凖音階固有音」として判断するだけでは早計なのです。

 つまり、ゲラゲラポーを移動ド唱法で表せば決して
「ミ♭ミ ミ♭ミ ドー」でもなければ
「レ♯ミ レ#ミ ドー」でもないのです。

 厳密には『ゲラゲラポー』を階名で視唱する場合は「レ♯ミ ミ♭ミ ドー」と表されるべきであるのです。とはいえ、作者の判断を尊重しなくてはならないので(譜面の読みやすさや楽理面の拘泥の軽減などの理由など)、私のこの意見をなすりつけるのも良くはないのも確かです。

 但し、厳密に楽理的な意味で表すならこのように解釈するのが最も良いのでありまして、これらの音階固有音の外にある音は、ゲラゲラポーの場合は同主調の短調の短三度音から拾って来れるとは雖も、1・2拍目ともに「短三度」音由来と考えては駄目なのです。1拍目(強拍)の拍頭の音は本来拍頭にあるべき上中音が導音としての楔を打たれることにより拍頭から追いやられるのです。割り込む様にして拍頭に滑り込んだ装飾音は臨時的乍らも「導音」として働く音でなければならない為、上中音の二度下からの音として判断する必要があるのです。ですからそれは決して「ミ♭」ではなく「レ#」であるのです。

 弱拍として2拍目に現れる音こそが、本来の調性がニ長調であり、それの同主調短調(=ニ短調)由来の音の「ヘ音」が「準音階固有音」として表されるべき音であるので、それは決して「レ#」ではなく「ミ♭」になる、という訳です。

 「きらきら星」の長前打音(先の譜例の中段)にほぼ等しく、ゲラゲラポーのそれは取扱う事が出来るのですが、夫々の歌い出しで異なる点は、「きらきら星」は最初は主音にまとわりつく様に変化した音が現れ、ゲラゲラポーは上中音、つまり長和音の第3音にまとわり付く様に変化する音が現れているのが特徴であり、特に「ゲラゲラポー」のド頭の音「レ#」である和音外音の取扱いは厳密に紐解く必要があります。それが次の例となる訳です。

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 これらの音の特徴は、元々の調性に据える「音階固有音」に対して半音のクサビを打ってゆさぶりをかけているに過ぎず、ブルーノートというのは、長音階の音階固有音から下行的に可動性変化を起している音なので、Cのブルースをやろうとする時に「B H B H」(=シ♭シ シ♭シ = B♭B♮ B♭B♮)と弾くおバカさんは居りませんよね!?

 ブルーノートがもしも上行性を持った音だとしたら、結局基の「音階固有音」に取り込まれる事を意味する事なので、ブルーノートの性格を全く理解していないものが、よもや「ゲラゲラポー」的解釈でブルーノートと同義に捉えていたとしたら目も当てられません。カシオペアのアルバム『HALLE』収録の「After School」のベースのメイン・リフもゲラゲラポーと同じ線を弾くのですが、これだって「ブルーノート」という解釈をしてはいけないモノなのです。判ってくれるかなあ、この重要な事を(笑)。

 ブルー音度の中でもブルー5度の起りはブルー3・7度よりも後ではあるのですが、このブルー5度の取扱いが、長音階的組織からのブルースだけでなく、短音階組織に取り込まれる様になったのも、ブルース/ジャズが、長音程の中に短音程を具備させる両性具有化から生じた物と同義として取扱う様になった事に加え、西洋音楽においてもジプシー調という短調組織で生ずる#4度の余薫を焙じる先例があった事も一因となっているのは間違いない所でしょう。


 ドミナント7thコードを取扱う際に我々が覚えるオルタード・テンションという音の中に「#9th」という音があります。しかし、この音の出自は本来なら「♭10th」であるという事を過去にも述べましたし、カンタベリー系ではお馴染みのキーボーディスト、デイヴ・スチュワートの自著内でもこの件はキッチリと語られております。

 ジャズがそれを「#9th」としたのは、ドミナント7thコードが次のコードへ進行する際、その先が長和音であろうが短和音であろうが、長調・短調という両方の正確を具有した捉え方の方が処理に手っ取り早い為です。コード進行の衒いを演出する為に同主調の短調の世界を拝借するというモーダル・インターチェンジという考えがまさにそれです。そうなると、長調を主眼としていた世界で「短旋法」の世界を呼び込む事と同義となります。なぜなら、音程というのは完全音程を除けば他の音度は長旋法の類か短旋法の類を拾って来れば、長短で生ずるヘプタトニックで扱う音を「ほぼ凡て」呼び込む事ができる、というのは以前にも語った通りなので、その辺りはブログ内検索をかけていただければすぐに確認できる事でしょう。

 短旋法を持ち込んだ場合、短2度と短3度を呼び込みます。ジャズメンはおそらくこの短旋法から呼び込んだ短三度音の取扱いをどうするかを熟考したに違いありません。10度音出自であるのは疑いがなくとも、10度音を形成するとそれまでの3度累積からの寸断と更なる上声部への分断をも生じかねませんし、ましてやそこで10音ではなく17度音にしようものなら、14度と16度音の取扱いすら生じてしまいます。唯、このちょっとした矛盾に一つの回答がありました。それは!?・・・

 ドミナント7thコードとは、その根音上に減三和音を具有している、という事です。

 減三和音つまりディミニッシュ・トライアドの「変化音」とは今でこそ殆ど取り上げられる事はありませんが、大別すると以下のような変化があります。


◆硬減和音・・・減三和音の第3音が半音上がって変化した和音
◆二重減和音・・・減三和音の第3音が半音下がって変化した和音


 現在のジャズ/ポピュラー音楽界隈はこうした楽理の重要な側面をスポイルする嫌いがあるので、こうした変化用例は忘却の彼方へと葬り去られておりますが、少なくともトゥイレの和声学を熟読すれば、これらの用法に触れる機会を得られる事でありましょう。

 抑も現今のジャズ/ポピュラー音楽界隈では減三和音(ディミニッシュ・トライアド)も減七和音(ディミニッシュ7th)も同義として捉えたとしても「ほぼ」違和感なく取扱える事が多いという誤謬が蔓延する事になった為、それらの(減三和音の変化用例)も葬り去られたのでありましょう。

 高中正義の名曲「Blue Lagoon」という曲のイントロではキーはEメジャーですが、イントロ冒頭からEdim -> E△7という2コードを繰返します。そのコード進行に於て仮に、彼奴等(←減三和音も減七も置換可能と宣う者)の言うようにEdimをEdim7として理解したとしましょう。すると「Blue Lagoon」ではEdim上でストリングス音で「dis音、つまりD#音」を奏する箇所が出て来るのです。

 Edim上の7度音とは減七度音である筈でそれはD♭音という事になります。調性からすれば嬰ニになっている筈ですから、本位ニ→変ニ、と変化している訳ですね。とはいえ7度音であったとするならば此処に「D#音」が現れる筈がないのです。和音がDはD♭であるべき、と申しているので、ここにD由来の音が併存することなど有り得ない筈なのです。しかし、和声的には減七の和音の四声体に加え、ストリングス音のD#音も奏される。これは、マイナー6th(♭5)コード上で長七度音が奏されたという理解に及ばなければならないのです。

 Em6(♭5)とは、英名でE、G、B♭、C#という構成音になります。奇しくもこのマイナー6thコード♭5の重要性は、濱瀬元彦著『チャーリー・パーカーの技法』内でも其処彼処で詳らかな用例が見られます。

 こういう事を知った上で、減三和音が減七和音に置換する事がどれだけ馬鹿げた行為であるかという事が理解できるかと思いますが、加えて、ディミニッシュ・トライアドの取扱いをきちんと知らないといけないという事で、硬減和音と二重減和音をあらためて知っておく必要があるのです。


 ハ長調という調域に於いて減三和音が生ずるのは勿論どこかお判りですね!?ロ音を根音とした時です。ではロ音を根音に減三和音を充て、その和音の第3音を半音上げてみましょうか。すると!?

 これが#9thとしての一義的な捉え方の誕生なのです。しかも、元来硬減和音はジプシー調をも視野に入れて進んで来た用法なので、ジプシー調と言われれば、自ずとそこには#4thの音が出現する音階の世界に手向ける様になります。ハ長調の平行調はイ短調ですね。イ短調から見た時の先の「嬰ニ音」って三全音の音が生まれますね。

 そうすると、長調・短調の両性具有をハナから扱っているジャズからすれば、ディミニッシュ・トライアドの硬減和音の取扱方を採用しただけで、シャープ9thとシャープ11thを呼び込んだ訳ですから、これは一挙両得と言えるかもしれません(笑)。この、あまりに大きな馳走に対して現今のフォロワーは今も猶出自を忘れたまま利便性の前から離れる事ができぬまま取扱っているだけの事なんですよ。しかもいつしかディミニシュ・トライアドはディミニッシュ7thに置換可能という愚か者を清算する様にもなってしまったジャズなんていうのは余りに酷すぎやしませんかね!?(嗤笑)

  
 でまあ、こういう訳であらためて硬減和音の用法などを知っていくとともに、ドミナント7thコードの多義性や投影法に向けて話を進めていくのでありますがね。

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