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ナベサダとマーカス [ベース]

 嘗てはヤマハのバイクTOWNYにも起用され、資生堂では草刈正雄と共演していたナベサダこと渡辺貞夫。近年ではバイクのCMは珍しくありませんが、原付バイクを除いて日本国内におけるTV CMというのは規制されていたというのもあって、そんな中78年頃でしたか。そういう規制のかかる所でCMに起用される程知名度のあったナベサダだったワケであります。余談ですがバイクのセパハンだって勿論車検通りませんし、セミカウルが認可されたのが1982年初春のホンダのVTを皮切りにヤマハRZが続いたと記憶しております。扁平タイヤ(70%未満)が認可されるのも確か82年だったと思います。


 資生堂での草刈正雄との競演は、ナベサダのソロ・アルバム「ランデヴー」まで続いたのではないかと思いますが、ナベサダの当時の音はと言えばガッド、リチャード・ティー、エリック・ゲイル、マーカス・ミラーが代表的なものでありまして、スタッフとマーカス・ミラーを混ぜこぜにした感じ。コレはもう食い付かざるを得ないだろ、と言わんばかりに魅力的な面々が参加していたワケです。

OrangeExpress.jpg ナベサダのソロ・アルバム「オレンジ・エクスプレス」はフュージョン・ブームの名残りもあってセールス的にはかなり良かったアルバムですが、時はもう1981年。ヒノテルのシティ・コネクションの後です。巷では「貸しレコード屋」が俄に増えて来た頃でもありましたが、1981年となるとマーカス・ミラーはマイルスやらブレッカー兄弟や渡辺香津美絡みで相当知名度が高くなって来ていた辺り。マーカス自身も自分だけのフレーズに固執することなく周囲のメンバーがリフ形成が巧みなモノだから実にやりやすそうに演奏しているのが手に取るように判るんですな。

 中でも、アルバム「オレンジ・エクスプレス」収録の「Good For All Night」のマーカスのプレイは絶妙でして、基本的にこの曲は4弦をDにドロップします。しかもディメンションと思しきエフェクトを薄くかけた自然ハーモニクスを絡ませたり、曲終盤にさりげなく32分音符を絡めたりと、茶目っ気タップリのプレイを随所に忍ばせているのがこの「Good For All Night」なんですな。マーカス自身のベースの音も非常にバランスが良く、当時としてはお手本サウンドにすべきひとつでもあったモノでした。


 マーカスが4弦を低く落とすのは「We Want Miles」でのプレイなど随所に現れますが、Dを遥かに超えてAまで落としていたりするんでそりゃあもうKORNのフィールディーも年代考えりゃビックリでしょうな(笑)。まあそれを除くとグローヴァー・ワシントンJrの「ワインライト」収録の「Let It Flow」がDチューンの代表格だったりするんですが、スタジオ・アルバムで残している作品は少ないので、当時はそれを聴く上でも結構参考になったモノでもありました。多弦ベースですらお目にかかれないくらいで、この年代ではフェンダーのBass VIを除けば5弦ですら相当珍しかった時代でした。


 サウンド追究だけでも充分参考になる所に加え、32分音符がさりげなく鏤められているとなれば、当時のベース小僧は挙って食い付くワケでありまして、私もそんなひとりだったワケですな(笑)。

 オーディオ・マニアでなくとも、器楽的な心得がある者にはオープン・リール・デッキが必需品。スピード系のフレーズをきちんと聴き取るために「半速」で聴くために。しかし性能の芳しくないオープン・リール・デッキだと上の周波数が伸びないので半速で聴いた時にやたらと音がこもって不明瞭になってしまう。そもそもオープン・リール・デッキは半速でも通常の可聴周波数領域を満たすスペックを要求されていた事もあってf特など上は平気で38k~50kHz位を満たしていたワケですな。これくらい高いと半速に落としてもハイファイ感が維持されていたモノでして、その恩恵を受けるのはレコード針のクオリティにもよりますし、CDが殆ど出回っていない状況だったからであります。FM放送をエアチェックしてみて半速に落とすと途端にこもって聴こえてしまうFM放送の周波数帯の限度をまざまざと思い知らされるのも、オープン・リール・デッキを所有する事で如実に違いを堪能できたワケですな。そうした時代でのハイエンド向けオーディオに注力していた層はCDがどれだけ普及しようとも礼讃するのは今でもスーパー・アナログの世界なワケであります(笑)。

 扨て、「Good For All Night」の32分音符部分は何処なのか!?と明示しなくては面白くないと思うのでその辺を語ることにしますが、CDタイム4分45秒辺りのフレーズ32分音符という符割で演奏されております。
 今回の譜例をCDタイムではない方法で表すと、曲終盤の8小節あるブリッジの6小節目の4拍目から7小節目にかけての部分を譜例にして示しているという事でして、注目していただきたいのは明確な32分音符のプレイにてマーカスはオカズを入れているという所。譜例にチェックマークを用いている所は左手ミュートによって音を出しているという事を示しており、その音に続いてサム連打(ダブル)という風になっているワケです。その後の半拍はハネ系の16分音符ではあるんですが記譜上はこのように半拍3連符系の表示にさせていただきました。Good4allnight.jpg

 ココで重要なのは拍頭において左手ミュートによる打弦で音を出しつつ32分の裏からサムのダブルが入る、というのがポイントです。拍頭からサムをダブルで連打というのは比較的容易ですが、左手ミュートから入るというのがポイントです。

 先にも語った「ットゥクツッペ!」というプルの入り方もそうですが、手順的にはやり辛かろうな所からフレージングを構築しているそれらの「マーカス節」を判断すると、他者に真似されにくいオリジナルなフレージングとしてかなり用意周到に練ったモノではないかと推察するのであります。故に暫くの間、マーカスはこの手の細やかな符割においても礼讃されたのでありましょうし、音作りも含めて多くの人が真似しようとしてもおいそれと直ぐに手に入れることができぬように練りに練ったモノではないかと、こうしたフレージングの妙味からもあらためて理解することができるのであります。本人に答を求めてもおそらくはヤンワリと否定するでしょうけどね(笑)。


 1981年というのはCD誕生の年でもあるワケですが、殆どのCDソフトはごくごく限られたモノしかなく、こうした年にリリースされた音源というのは勿論アナログ・レコードを聴くことになるワケですが、新品のアナログ盤であっても不運な事に針飛びを起こしてしまうことが稀にあったモノです。そしてそういう針飛びに対してビクビクしていると、たまにしか入って来ないこのような、ベースではそれこそ珍しい音価である32分音符のプレーなど聴き手側としても予想だにしていないので針飛び起こしたのかと誤解してしまったりする事もあったモンでした(笑)。ある意味CDメディアの発達というのは古い音源との照らし合わせが可能になった事で、細やかなプレーなど違いを見抜くことに貢献していると思いまして、私としては必ずしも音質ばかりに耳が傾くのではなく、こうしたプレイ面でのおさらいとしてCDメディアは役立っているので、ジェントル・ジャイアントなど幾ら集めても飽きないのはそういう照らし合わせの作業があるからなのかもしれません(笑)。

 扨て、今度は楽理方面のネタも絡ませ乍ら色々と語って行きましょうかね、と。

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