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微分音の使用例を「にんじゃりばんばん」に見る [アルバム紹介]

PaulMauriat.jpg 先日私は、おフザケ系の曲をリリースした所でありまして、それがポール・モーリアで有名な「そよ風のメヌエット」を和楽器アレンジしたモノでした。メインのメロディは琴の音を使って、三味線やら尺八も用いてアレンジしたのでありますが、抑もこの手のアイデアが浮かんだ理由というのが、テレ朝さんの番組中で「美文字ランキング」の時に使われるBGMにヒントを得たモノでして(笑)、あのBGMを聴いているとついつい私のアタマの中にポール・モーリアの「そよ風のメヌエット」の雅楽アレンジが浮かんできてしまい、「思い立ったが吉日」とばかりに制作したモノでありました。


 私は永い事、ポール・モーリアというイージー・リスニング系のCDを持ってい乍らも数十年も聴いておらずにいた為(86年頃に購入して1度だけ別の曲を聴いたきり)、もはや記憶すら編成してしまっていて、本来はト長調の作品なのに「嬰ヘ長調」で憶えてしまっている始末でした。制作に取りかかる迄キーの記憶が変成してしまっていた理由はおそらく、過去にカセット・テープ時代に、ピッチが速いデッキにて録音されたテープをそれよりも回転が僅かに遅いデッキで再生した事で記憶が変成していた可能性が極めて高いと思われます。

 今やデジタル配信の時代、ピッチの差異など無関係なリスナーが多い世の中であると思いますが、カセット・テープ時代だと同じメーカーと機種でも固体差でテープの再生速度が変わる位だったので、非常によく使われた46分テープ(片面23分ずつ)というテープを用いた場合、収録時間が結構ギリギリに録音されているレコードなどでは、ある持ち主では46分テープで録りきれるのに別の者のデッキだと録りきれないという珍妙な現象が頻発していたモノです(笑)。

 正直、ウォークマンとて再生速度は速く、「ほぼ」半音ピッチが上がって再生されてしまいかねない程でして、自宅のデッキとウォークマンのピッチを合わせるには、デッキの天板を開けてトリマーの微調整を施してやらなくてはいけなかったモノです。私の場合は器楽的な心得があったのでクロマティック・チューナーやらを駆使して合わせていたモノでしたが、当時のバンド連中というのは概ねMTRに録音する前にA音のテスト・トーンを録音しておき、其の音が「A音」という風にして、時にはチューニングを緩めたり高めたりして対応していたのでしたが、鍵盤奏者は大変だったと思います(笑)。


 そんな懐かしさを思い起こさせるモノですが、ポール・モーリアをよもや和楽器で演奏となると是亦ヘンテコな情緒になるのでは!?と思うのでありましたが、意外にも日本独特の音が別の情緒を生み出して素のメロディの良さにグイグイと引っ張ってくれる推進力に思わず脱帽してしまった私でありまして、私のたかだか数十年ほどの古い記憶は「古(=いにしえ)」と変貌してしまいそうなほど、和楽器の存在感にあらためて感服した次第でございます(笑)。


 「雅(=みやび)」を感じる日本古来の音階、例えば私は陰音階が大好きだったりしますが、フリジアンを元として喩えるならば、特性音である第二音とスケール・トニックとの「半音」が生み出す情緒が絶妙なのでありまして、少し前にも半音の情緒を語っていた時にも触れましたが、やはり短二度を形成して前の高い音が掛留していたりすると、仄かに前の高い周波数に低い周波数が絡み付こうとする性質から「プラルトリラー」の様に聴こえたりする様な情緒が生まれたりもするモノで、半音とやらを巧く扱うと、こうした特色を活かせたりするワケでありますね。ninjaribanban_ep.jpg


 例えば、つい最近のきゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」では、「あざやかに」という「ソ ソ↑ ファ レ シ(=ヘ短調での階名)」の「か」の部分のレ音の直前は実は装飾音符が半音高いA♭音(=ミ)が与えられて、そこからポルタメントで唄われている情緒が実に「雅」を感じる絶妙な旋律だったりします。このフレーズは曲冒頭から出て来ますが、1分28秒部分の所からだと歌以外にも背景のパーカス(=レトロ系ドンカマ・サウンド)のフレーズが、是亦7連符のケツ2つと思しきリズムが組み合わさっていて興味深かったりします。他にも「にんじゃり」というフレーズの「テッテケ♪」というリズムは単純に8分音符+16分音符×2ではなく、時折5連符ケツ2つっぽいリズムをきゃりーの歌トラックに感じる箇所もあるのでFour on the Floorであってもキッチリ拍節にノっただけの唄い方だけではなさそうな所もあらためて興味深かったりするモノであります(実際はどうなのかは不明)。
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 扨て、前述の「興味深さ」という言葉の意図は本記事タイトルの微分音についての事ではなく、単純にこの楽曲への「食い付きやすい」という、「ポップス」という概念をひとたび思い起こさせてくれるかのような親しみやすさという魅力を形容したモノであります。音楽産業が一時期よりも衰退して、2012年度は前年を上回ったというニュースも耳にしたモノでしたが、私が中田ヤスタカという作曲家を前年度と鑑みた場合、きゃりー関連作品に於いては前年(ぱみゅぱみゅレボリューション)よりも食い付きやすい曲は生まれそうにないなーなどとタカを括っていて、産みの苦しみを味わっているのではなかろうかと思っていた所に「にんじゃりばんばん」という食いつきやすい曲がCMで流れて来た所に、斜陽の音楽産業の中での数少ない勝ち組のひとりであろう中田ヤスタカのポップな感性というのは、或る意味では19世紀に置き換えるならば「キッチュ」(=当時のサロン・ミュージック系のひとつの事でキッチュ松尾さんではありません)な立ち居振る舞いにも似た21世紀に於けるポップスの改訂を中田ヤスタカに見る事が出来る様に思えます。


 とまあ、漸く本題に入るのでありますが、中田ヤスタカとて今回の「にんじゃりばんばん」に於いては微分音を使用しています。それもかなり「意図的」で、アトモスフィア系やらSE系やらインダストリアル素材を漠然と偶々扱っているのではない、という事は後述でお判りになるかと思います。とはいえ中田ヤスタカがこうした微分音を使用する事にどのような意図が隠されているのか!?という本意迄は判りませんが、微分音とて四分音、六分音、八分音と、今やウィキペディアを見るだけでも取り敢えずは体系化されているワケですから、ある程度巧く配置すれば微分音とやらは表現可能ではあると思います。とはいえ中田ヤスタカの表現が体系に則っただけと言うのではありませんが、先のブーレーズの「Doubles」に於ける150セント(=短三度or増二度の半分の音程)の扱いひとつ較べてみても、中田ヤスタカのそれはまだまだSE的な色彩的に使っている表現と言って差し支えないでしょう。坂本龍一の「夜のガスパール」に於いても色彩的な使用に留まっていて、「旋律的」なフレージングとしての使用ではありません。


 とはいえ150年が音楽という歴史の一つのサイクルと言われている様に(奇しくもバロックやバッハの死が節目となっていたりする)、近・現代の到来を西暦1900年とした時、次の「節目」はもうあと40年も無い所に2013年というブログ投稿時の現在があり、それを考えると、次の50年や100年後や間違い無く微分音を含有する和音の体系化がごく普通に存在しているのではなかろうかとも思え、サンプラーやら自然現象のSEをレコーディング技術の発達に伴ってその後のサンプラー使用から導入の方法論を経て、今こうして体系化されつつある所を見ると、微分音という音の素材を漠然とフレーズ・サンプリングするのではなく、きちんと単音から組み立てている所に、私は中田ヤスタカの本意はどうあれ、そこの構築をきちんとひとつひとつ組み立てている使用例を敢えて評価したいと思います。音楽的にこれが成功しているかどうかは別として(正直この楽曲に無くとも良いとは思っていますが)、ポップな作品を作る彼とて何かへの反駁が微分音の使用だったのかもしれませんし、いずれにしても「TK」サウンドとやらの人とは少し違う音楽への拘りを持つタイプの人なのであろうとあらためて考えさせられるものでもありました。


 「俺だって微分音使えるぜ!」ってな具合に、唯単純にその音響的作用ばかりが体系化していくのは時間の問題でありましょう。現に私も当ブログで2年前にそうした音をサンプルに使った事もある位ですので、いずれはアトモスフィア素材ばかりに頼るのではなく自力で作る様な体系化が進むとは思いますが、私が言う所の微分音社会の整備は、和声的体系の拡張という発展とそれに伴う表記や性格の体系化の事であります。


 扨て中田ヤスタカの「にんじゃりばんばん」に於ける微分音使用例ですが、これは曲の一番最後のフェルマータ部分でありますね。漏れが無い限りは(笑)。

 私が音を採る際はピッチ解析ツールの類のソフトを使わないので言い訳がましいかもしれませんが(笑)、私の聴音では七声の部分音をこうして抽出できました。ここで興味深いのは最低音の「desis」と最高音から次に低い「aises」(※これらの微分音の呼び方は便宜的な形容です)それぞれは、実際には短六度を形成している所が興味深いですね。他の微分音の八分音、六分音、四分音のそれぞれの属する社会の放たれ方に秩序めいた程の脈絡はなさそうですが、音響的色彩としては十二分なほど巧く行っていると思います。「にんじゃりばんばん」の本曲も充分に食いつく事のできる判りやすい作品ですが、こうした微分音へ頓着する人がどれほど存在するのかと我乍ら飽きれております。ポップスの聴き方違うでしょ!みたいなね(笑)。
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