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和音の二度への収斂も亦重要 [スティーリー・ダン]

 扨て、ココの所ドナルド・フェイゲンの新作「Sunken Condos」の各曲考察を繰り広げている私ですが、前回のブログ記事で語っていたのは同アルバム収録の「I'm Not The Same Without You」でありまして、曲ド頭に出て来る「完全四度等音程和音」という和音などポピュラーな枠組みの方からではなかなか聞き慣れない呼称ではないかと思いますので、その辺りをキッチリとあらためて語っておくコトに。


 先の等音程和音について疑問をお持ちの方は「等音程」でブログ内検索をかけていただければ当該記事は相当数拾って来るかと思います(笑)。このようなある意味特殊な和音は以前から私は話題にしている事もあり、私のブログはそうした音楽の世界観を語っているという事をあらためてお判りになっていただけると助かるのでありますが、等音程和音というのは完全四度累積ばかりではなく、等しい音程を累積させていく音程ならばそれらは総じて「等音程」の構造を持つ和音という事になります。

 例えば、短三度を累積させていけば減七の和音を生み、長三度を累積させれば増三和音を生むのでありまして、これらも等音程和音の醍醐味の一つであります。そうして和音を構成させる音がさらに増えていくように構築させる「等音程」としては手っ取り早いのが「完全四度」での等音程和音なワケでして、この和音は軈ては半音階を得るコトになります(完全四度を11回累積させた場合)。

 完全四度を累積させてそれらを「狭く」転回させると、実は軈ては二度音程として各構成音がブドウの房の様に集積されていく様になります。その二度の様は最初は長二度音程ですが集積の度を強めると次第に短二度という「半音」で集積されていく事となります。こうした所から完全四度累積型の等音程は「二度和音」とも呼ばれるワケでして、こうした事は私のブログにおいて結構前から語っている事であります。

 
 通常我々が用いている体系化された和音というのは3度音程を用いて累積させる物です。その累積の「最果て」と知られている物では13度音に位置する音程ですが、体系化されていない方の特殊な世界の方では15度以上の23度迄累積させて行く事もあります。但し、15度音程以上となる場合に於いてはそれまでに累積させて来ている構成音との「異名同音」を避けるようにして3度音程に依る和音を構成させていき、それが一般的な音楽理論の枠組みから超越して七声体以上の和音を構成していき、軈て12音の音を累積させると、その和声の体の転回は半音音程の集積として現われ、長短の3度音程は短二度(半音)へ「収斂」したという解釈になる、という事です。


 3度の累積のタイプを長三度・短三度の二種類として和音の構成音として累積させていく時、和音の構造が従来の和音の体系に収まっている事など無関係に度外視して長三度と短三度の現れ方を「規則的に」構築させるという見方もする事があります。例えば長三度を4半音の「4」、短三度を3半音の「3」という風に、それらの音程が次の様に(どのような和音の構築になるかは無関係に)次の様に構築させていた場合の一例を挙げてみます。

3・4・4・3・4・4・3…

 という配列を例にすると「344」という音程幅を「規則的」に用いている事が判ります。この音程を根音から構築していく和音ですので先の音程をCをルートとして当て嵌めていくと!?

 C、E♭、G、B、D、F#、A#、D♭(=C#のエンハーモニック)…

 という風に規則的に構築されている「等比音程」に依る和音だという事も判ります。


 等音程を扱う理論書はレンドヴァイ著の「バルトークの作曲技法」や松平頼則著の「近代和声学」を筆頭に挙げる事ができるでしょう。等比音程を扱うのは「近代和声学」はもとよりアルノルト・シェーンベルク著の「和声法」が代表的な理論書となります。


 こうして横道に逸れた物の「I'm Not The Same Without You」のド頭のコードは六声に依る完全四度等音程和音から始まるワケですから、あらためてこうして語っている所なのですが、完全四度の等音程を巧く表すコードというのは存在せず、sus4という表記を便宜的に扱う事でしか方法はありません。ですから私は前回のブログで「Asus4/F#sus4」という、2つのsus4コードが上下に表記されるハイブリッドな形式(これだってそうそう目にする事はないでしょう)を用いて語っていたワケです。


 扨て、先の「I'm Not The Same Without You」のベース音はF#から始まるのですが、和声体系の面からF#sus4と下声部に表記せざるを得ない事は目をつぶっていただくとして、完全四度累積を開始している起源的な音はC#に見出す事ができます。つまり、C#から完全四度累積を5回累積させたのが先の形だとすれば、さらにもう一度上方に完全四度累積を行うと「C# - F# - H - E - A - D - G」という風に「G音」を導く事が可能です。但しココでのG音は「I'm Not The Same Without You」とは全く無関係な音ですが、完全四度等音程という6回の完全四度を累積させた時、「全音階(=ダイアトニック)な音列」としてヘプタトニックを導く事を意味します。それが次の様な譜例となります。
fis_phrygiandiatonicgeneral.jpg

 こうしてF#フリジアンという姿を確認できたワケですが、通常我々が調性を強く意識する和声の枠組みで「七声」の和声を使わないのは理由があります。例えば「ドレミファソラシ」の音の7音を全て使った和音を集積させるのはカンタンですが、カデンツという機能和声の側から見ると、トニックもサブドミナントもドミナントも同時に使う事になるという事を意味します。

 但し、オリヴィエ・アラン著の和声の歴史にもレコメンドされるように、R.シュトラウスのアルプス交響曲での総和音もさる事乍らF.リストS.55「枯れたる骨(不毛なオッサ)」では「ホの旋法の総合」という例があり、これはEフリジアンから成る音列の全てをE音から3度累積した体としての一例として取り上げられているのです(E、G、H、D、F、A、C、E)。

 機能和声の方での枠組みからすればE音を最低音に「F△/G△/E」という風に無理矢理表記する事は可能です。それどころか属七の和音を包含しておりますが、属七の和音の解決先であるC音も同時に取り込んでいる事から「F△/G△」という現在のローカルな呼び名から言えばGの11thコードの三度下にE音がある、という風に理解する事が可能であります。

 抑、属七の短三度下に音が在るってぇのはどうなのよ!?と疑問に思う方が多いのではないかと推察します。しかしそれだとE音を根音とした音からG7を包含した体をEマイナー基準で見るとEm7に♭9thを生じている体となるので、是亦タチが悪い表記なんですね(笑)。

 機能的枠組みではマイナーコード上での短九度は禁忌なモノとして習っている筈ですが、G7/Eだと何故良いのか!?という事も私のブログでは過去に述べておりますのでその辺もブログ内検索をかけてもらえればと思うのですが、実例として説得力がある例はチック・コリアが使用しているので、チック・コリア・エレクトリック・バンドの2ndアルバム「Light Years」収録の「Flamingo」という曲の冒頭でのやはりB♭7/Gというコードがすぐに現れますので容易に確認出来る事でしょう(過去のブログで紹介済み)。この作品は本人監修に依るスコアで私自身確認済みですから間違いありません(笑)。
 

 ココまで語ればもうお察しが付くかと思われますが、「I'm Not The Same Without You」のド頭のコードがさらに完全四度累積を試みるとF#フリジアンを総和音という事になり、コレは先のリストの「枯れたる骨」に近しい和音になるという事を言いたいのであります。但し、フェイゲンがパクっているというのではなく、和音というのはスティーリー・ダンの方々も我々もほぼ同じコードを使う事だってある様なモノと考えればよろしいでしょう。「俺以外の人はメジャー7th使っちゃダメ!」とか言い出す人など居ないでしょう(笑)。

 フェイゲンの方は総和音でもないのですし、強調しているのは四度累積に依る響きだという事です。フェイゲンの使うそれはDメジャー・スケールからG音を省略した他の全ての音を使えば確かに構成音は得られますが、その音を使って「和声的」に使いこなせる人は一体どれほど居るでありましょうか!?しかも四度音程を意識させつつ使っているワケですからね。それを考えるとよくよく考えられて(耳が伴って)作られているのだと痛感させられます。
 
 勿論フェイゲンやベッカーだって他の人が使う全く同種のコードだって使う事がありますが、彼らが使うとやはり違うワケですね。そんな側面を紐解くだけでも音楽は面白いワケですね。

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